斎藤酒場(十条)

JR埼京線、十条駅前のロータリーを右に回り込むようにして右側の路地に入ると、左手に大きく「大衆酒場」と書かれた紺の暖簾。

そうです、ここが斎藤酒場です、道順も分かりやすいのですぐに見つけられると思います。
こちらは埼玉県住まいの自分には非常になじみのある地域ですので、有名な酒場として一度訪れてみたいと思っていた場所でした。

自分は大体店の玄関や看板、雰囲気で入るか入らないか決めたりするもんですが、ここはそういった意味でも知らなかったとしても確実に十条をうろうろしていたら入店したと思われる重厚な雰囲気を持っています。

大きな暖簾をくぐり、引き戸を開けて店内に入ります。

午後五時少し過ぎた時間ではありましたが店内はすでにたくさんの人です。

「いらっしゃいませ、おひとりさん? こちらへどうぞ」
と、店を切り盛りしているお母さんのひとりが店内右手のテーブル席を指示してくれました。
この店はカウンター席はなくすべてテーブル席、しかもすべて形が違う天然木のテーブルなのです。

お客さんは仕事帰りの一人客といった感じの方が、それぞれがテーブルの空いてるところへ、ひとり、またひとりと案内されて入れ込み状態で入っていきます。

「小瓶のビールいただけますか?」

まずはビールから始めます。

ビールはサッポロ黒ラベル、小瓶は330円、ちなみに大瓶でも440円です。

壁のメニューに「冷やしビール」と書かれているのが時代を感じます、昔はキンキンに冷えていることがセールスポイントだったのかもと思いを馳せます。

なにしろ、昭和三年(1928年)創業、創業以来90年以上たっている、老舗中の老舗です

そのビールと一緒に出てくるのはお通しの小皿、ここのお通しはサービスで落花生が3つ。小瓶のビールはコップに3倍くらいの量(350ml)なので、とりあえずなにわともあれといった時にちょうどいい量です。

ものの10分ぐらいで落花生3つをつまみにビールを飲み切ります。
その場で軽く手を上げて合図をすると「は~い」という軽やかな返事でお母さんがやってきてくれます。

「お酒とまぐろぶつください」
「は~い}

ホールでは3人ほどのおかあさんたちが店内に目配りをしていて「すいませーん」の声が飛ぶと
「は~い、お声がけどなた?」
と声が上がったほうにすぐに出向いていきます、そして、お客さんが
「スジコ一つと・・・あと、冷奴もらおうかな」と注文すると

「は~い、あら、スジコとヤッコで覚えやすいわ」
なんて、忙しい店内にありながらもお客さんとの会話を楽しんでいるようで、ユーモアがあって好感がもてます、にっこり微笑んでくれて気持ちがいいもんです

「はい、お酒こちらでしたね」

と、受け皿に置いた分厚い多角形のコップにトトトっと、受け皿にあふれるまでお酒を注いでくれます。このお酒(清瀧)がなんと160円。そしてマグロぶつは小皿に盛られて250円、お酒とマグロブツで合わせて410円という驚きの価格です。

< ちなみにマグロ刺しは450円でそれがこの店で一番高いつまみです 2番目に高いのはさっき隣のお客さんが頼んでたサンマ塩焼きの400円、逆に一番安いのは花らっきょうの150円。2番目はワサビ漬けの180円 その次は冷ややっこ、ポテトサラダ、カレー野菜コロッケ、串カツ、イカ塩辛、お新香盛り合わせなどなどの200円ものとなり 250円、280円、300円、350円と続きます。

目の前に置かれている伝票にも一番左の縦の列には150円、180円、200円。先ほどの値段が印刷されていて、その右側に1,2,3,4・・・と数字が書かれています。

呑んだり食べたりするたびに、その数量のところに印がつけられ、最後にこの伝票でお勘定してもらうといった感じです。

さっき入ってきた常連さんらしき男性客。アイテル席に座ると、お母さんのほうから「お酒と煮込みでいいの?」なんて、先に声がかかっています。
ほぼ毎日やってきては酒と煮込みを注文してるんでしょうね

自分もお酒をおかわりして、今度はこの店の名物料理の一つポテトサラダ(200円)をもらいましょう。

「せんべろ」という言葉の発祥とされる「せんべろ探偵が行く」で有名な中島らもさんも「今の日本に失われてしまったのはこういう空間なのだ。十条に引っ越そうかという考えが本気で脳裏をよぎった。「斎藤酒場」がおれの町内に引っ越してきてくれたら一番いいのだが・・・」と接酸しているほどです。

丁度一時間ほどの滞在、本日のお勘定は1100円でした。どうも美味しく頂きました。